隣人と恋に落ちたい

盛者必衰の切なさは平家物語のころから伝わるカタルシスの一種だけども、あの物悲しい感情は「切ない」としか形容できない。言語化しにくいものの代表ですよね。

最近まで夏帆さんのパンチラ目当てで見てた「みんな!エスパーだよ!」っていうドラマが終わった。
パンチラ目当てだったくせに案外面白くて最終話まで見てしまったんだけど、最終回の「エスパーだけど結局普通の生活に戻りました」みたいな描写が、すごく切なくて、救いがなくて、でもなぜか『心地いい』部分もあって、これが平家物語で言ってたことかぁなんて思っていた。まあ平家物語そんなに知らんけどね。
あ、実際にはそういう終わり方じゃなかったよ。だからこれはネタバレじゃないよ。

救われないものの美学ってのは確かにある。
映画で言うと、ジョゼと虎と魚たちとか、人のセックスを笑うなとか、決してハッピーエンドじゃないのになんかスッキリした終わり方をする。リンダリンダリンダとかも韓国人のボーカルを最後空港まで送りに行って感動の別れみたいなベタなことしないのが良かったなぁ。そういうのも含めてリンダリンダリンダはいい意味でリアルな青春映画だったなぁ

切ないものに感情が揺さぶられるのは何故だろう。

秒速5センチメートル」も同じような感じだよね。なんとも言えない切なさが心にしみる。
あの言い様がない切なさを定期的に享受したくなるマゾヒスティックな感情は実に不思議だ。

昔に僕が好きだった人は、マンションの隣人だったんですよ。

その子はまあ、大学は違うけど高校からの友達で、キャンパスが僕の近所に変わったから三回生から引っ越してきたんだけど、誰か知ってる人がいるマンションがいいってことで、僕と同じマンションに引っ越してきた。
そんでたまたま、僕の隣の部屋が空いてたから、そこに越してきたんだ。

高校時代は異性としてほとんど意識したことがない、ただの女友達だったんだけど、隣の部屋に住むようになって、顔を合わせることも多くなって、お互いのことをいっぱい知るようになった。
彼女の案外オタクなところも知った。彼女の他人が知らない部分を知って、僕は嬉しかったんだ。
うちのマンションの壁はわりと薄いから、彼女の生活音が聞こえてきて、洗濯機を回す音なんかに僕は柄にもなくドキドキしたりした。
やがて、互いの部屋を行き来して一緒にお酒なんか飲むような関係にもなって、僕たちは親密度を増していった。

気がついたら、僕は彼女のことを愛していた。

それで、四回生になるかならないかの頃だったと思う。
僕は、思い切って彼女に告白したんだ。

でも、フラれてしまった。
僕とはそういう関係になりたくない、って言われてしまった。
そっかぁ、なんて笑っていたけれど、内心しばらく立ち直れなかったなぁ。

それから僕らはちょっと気まずくなって、一緒にお酒を飲んだりすることもめっきりなくなって、朝のゴミ出しでたまにすれ違うくらいになった。

僕は研究室の実験や院試勉強ばかりの大学生活になったんだけど、

彼女には、彼氏ができたみたいだった。

近所のスーパーの買い物袋を持って部屋に帰ってきた僕はたまたま、部屋に入っていく彼女と、それと、僕の知らない男を見たんだ。

買ってきた豚ロース肉で生姜焼きを作ってると、聞こえるんだよね。
彼女と、聞いたことも無い男の笑い声が。

夕食のあと僕はいつも通り論文を読んでいたけど、内容が全然頭に入ってこない。
そりゃそうだよね、彼女の楽しそうな声が聞こえてくるんだから。

僕といっしょにいるときにはしてくれなかったような笑い声が聞こえてくる。
彼女、こういう笑い方もするんだ。知らなかったよ。

やがて、隣の部屋から彼女の喘ぎ声が聞こえるようになってからは、ヘッドホンを装着するようになった。
もう、耐えられなかったんだ。

それからもたびたび隣の部屋から男の声が聞こえるようになって、そのたびに僕はヘッドホンを着けて、聴きたくもない音楽を爆音で聴いていた。

そこで実感したんだよ。
これが「切ない」って感情なんだなあ、ってね。

やがて大学院への進学が決まって、僕は引っ越すことに決めた。
大学には今のマンションからも通えるのに、強引な理由をつけて引っ越すことにしたんだ。

こんな生活を続けてたら僕は壊れてしまう。
だって、わざわざ僕の隣に越してきた女の子がいて、好きになって、でもフラれて、あげく毎日その子と知らない男の営みを聞いてるんだぜ?
おかしくなるに決まってるじゃないか!

それから僕は彼女ともう会うこともなかった。
やがて僕のチンコは肥大に肥大を続け、しまいには月に到達するようになり、「世界一チンコがでかい男」ということでギネス認定された!!


という妄想をしました。

俺には好きになる女以前にフラれる女もいない、はぁウンコウンコ